とある医者の手記
崩壊した病院で発見された医者の日記
XX 年 9 月 9 日
看護師と私は崩壊した病院の片隅で 患者たちを治療している。 他の医師と看護師はとうの昔にいなくなった。 幸いにも今まで患者を治療できているということは この崩壊した病院がまだ宇宙人に気づかれていないようだ。 薬と消毒液も残り少ない。いつまで持つだろう。 患者はどんどん増える一方で 外の宇宙人は減る気配がない。 早くこの悪夢のような生活が終わってほしい…
XX 年 10 月 11 日
今日看護師が残しておいたと思われる メモを発見した。 いっそここにいるよりアークに行った方が いいかもしれないと。 光の見えないトンネルの中を歩いているようだと 書いてあった。 十分に共感できる。しかし私は諦めたくない。 何ヶ月、いや何年かかろうともここで患者を治療し もう一度平和を取り戻したい。 きっとそうできるはず。
XX 年 10 月 15 日
看護師がこの数日間姿を見せない。 予想していたことであるからかそう驚きはしない。 アークに行ったんだろう。 今日も地上のどこかに隠れていた患者たちが この病院を訪れる。 患者がいなくなるまで私はここにいるつもりだ。
XX 年 12 月 8 日
今日最後の患者が死亡した。 もう病院には誰も来ない。患者がいないから暇だ。 何もしないで 1 人でいるせいか雑念が次から次へと湧いてくる。 お腹がすいた。 まともな食事をしたのは いつだろう…? 私に残っているのは手術用メスと患者の遺体だけ。 しきりに悪い方に考えてしまう。 私は患者を守る医者だ。 どんどん自分がおかしくなっていく気がする。 誰でもいいから病院に来てほしい。 私が理性を保てるように。